MMPAです。
金銀プラチナなどの貴金属の価格が上昇基調です。
最近少し下げましたが、安全資産としての金の地位は不動のように見えます。
そこで、この数字を見てください。
日本という国が保有している「公的な金(ゴールド)」の量です。
- 保有量:約846トン
- 時価換算:約21兆円(!)(26000円/gにて計算)
世界ランキングで見ても、日本は堂々の第8位。
アメリカ、ドイツ、イタリアといった大国に並ぶ、世界有数の「ゴールドホルダー」なんです。
これだけの資産があれば、日本の財政も安泰…!そう思いたくなりますよね。
しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。 「この12兆円もの金は、一体誰が持っているのか?」
1. 似ているようで全く違う「3つの主体」
誰が持っているのか。
思い浮かぶのは「日本国」「日本政府」「日本銀行」といったところでしょうか。
まず整理しておきたいのが、それぞれの定義です。
ここを混同すると、ニュースの読み方を誤ってしまいます。
① 日本国(Japan)
これは「国家そのもの」を指す概念的な総称です。
国際統計(IMFなど)で「日本の金保有量は約846トン」と言われるときの「日本」は、この包括的な意味での日本国を指します。
いわば、日本というチーム全体の合計値です。
ここには日本国民は含まれません。
あくまで国家という公的なものになります。
② 日本政府(Japanese Government)
具体的には「行政」を担う内閣・各省庁を指します。
主に財務省ですね。
私たちの税金を管理分配し、予算を編成する「国のお財布」の持ち主です。
③ 日本銀行(Bank of Japan)
日本政府とは独立した「中央銀行」です。
政府から55%の出資を受けているため親会社・子会社の関係に近いですが、憲法や日銀法によってその独立性が守られています。
「政府の銀行」ではあっても「政府の一部」ではありません。
2. 日本政府はもう「金(ゴールド)」を持っていない?
なんと、現在、日本政府(財務省)自身はほとんど金を持っていません。
かつては財務省が管理する「外国為替資金特別会計(外為特会)」というお財布の中に、大量の金が保管されていました。
しかし、2021年に大きな転換点を迎えます。
財務省は、コロナ禍の財源確保や為替介入の資金繰りのため、保有していた金(約80トン分)を日本銀行に約5,000億円で売却(2021年の金価格はおよそ6600円/g)したのです。
これにより、日本が公的に保有する金のほとんどが「日銀名義(日銀の資産)」へと集約されました。
つまり、現在の日本政府の財布の中身は、金(現物)ではなく、主に「現金(円)」や「米国債(外貨)」などで構成されているのです。
では、日本が誇る846トンのうち、残りの「760トン」は一体どこから来たのか? 実はこれ、日銀が最近の政策で買い集めたものではありません。その正体は、約50年前、日本が高度経済成長に沸いていた「昭和」の遺産なのです。
1ドル360円時代の「猛者たちの証」
日本の金保有量が現在の水準に達したのは、1970年(昭和45年)から1971年(昭和46年)頃のこと。
当時は「1ドル=360円」の固定相場制で、ドルを金と交換できた時代です。
戦後の復興からがむしゃらに働き、輸出で稼ぎ出した大量のドルを、当時の日本はせっせと「金」に交換して蓄えました。
しかし、1971年のニクソン・ショックでドルと金の交換が止まると、日本は金の買い増しをピタリと停止します。
以来、半世紀以上にわたって、日銀はこの760トンを**「一度も売らず、一度も買い増さず」**、地下金庫でタイムカプセルのように守り続けてきました。
つまり、私たちが今「黄金大国」と呼んでいるものの実体は、**「昭和の猛者たちが命がけで稼いだ貯金を、日銀が50年間ガチホ(放置)し続けているもの」**なのです。
政府の財布は空っぽでも、日銀の金庫にはこの「動かざる遺産」が鎮座している。
これが日本の金融構造のユニークな点です。
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3. 日銀の持つ金が「簿価1円」といわれる理由
日銀が半世紀もの間、金に関しては「何もしない」という究極の放置を貫いてきた証拠は、その帳簿(バランスシート)にハッキリと刻まれています。
現在の市場価格(1g=26,000円)で計算したところ、日本の金846トンの価値は約21兆円に達します。
しかし、日銀の帳簿上の評価額はわずか約4,300億円。
- 日銀の帳簿上の価格(簿価): 1g = 約479円
- 現在の市場価格(時価): 1g = 26,000円
なんと、市場価格の約54分の1という、現代ではあり得ない数字で記録されているのです。
なぜこんなことが起きるのか?
それは、日銀が金を「昭和の取得価格」のまま計上し続けているからです。
昭和40年代の金価格は1g=数百円程度でした。
その後、一切の買い増しを行わなかったために、平均単価が更新されず、当時の「安すぎる価格」がそのまま残ってしまったのです。
「20兆円の含み益」が動かせない理由
「この20兆円を超える含み益を使えば、国の借金なんて一気に返せるじゃない?」という声は当然上がります。
しかし、ここには「独立性」という厚い壁があります。
この21兆円は、日本円という通貨が暴落しそうになった時に「日本にはまだこれだけの現物があるぞ」と世界に示すための、いわば**『最後の担保』**です。
もし政府が「お腹が空いたから、そのお宝を売って予算にしてよ」と子会社(日銀)に命令し、この金に手をつけてしまえば、世界は「日本は追い詰められて中央銀行の資産を切り売りし始めた」と判断します。
その瞬間に円の信用は崩壊し、猛烈なインフレを招くリスクがあるのです。
まさに、「宝の持ち腐れ」ではなく「触れてはいけない聖域」。
21兆円という輝きは、日銀の金庫の中で静かに円の信用を支え続けているのです。
4. 「独立性」がもたらす複雑な関係
「日本政府は金を持っていないが、政府が55%出資している子会社の日銀が金を持っている。なら同じことではないか?」
そう考えることもできますが、現代の民主主義国家では**「政府と日銀の財布は分ける」**ことが非常に重視されています。
これを「中央銀行の独立性」と呼びます。
もし政府が日銀の財布を自由に使えるようになれば、政府は選挙に勝つために際限なくお金を刷らせ、バラマキを行うかもしれません。
それを防ぐために、日銀の金庫は政府の手の届かないところに置かれているのです。
5. まとめ:私たちは「金の行方」をどう見るべきか
「日本国」としては世界第8位の公的金保有量を誇りますが、その実態は**「政府が使い果たさないよう、独立した日銀が金庫を守っている」**という構図です。
私たち投資家にとって、この構造を知ることは非常に重要です。
- 政府: 借金(国債)が多く、金利が上がると支払いが苦しくなる。
- 日銀: 金利を操作して物価を守る役割があり、最後の砦として金を持っている。
この両者のせめぎ合いが、円安・円高という為替の動きや、日経平均株価に直結しています。
次に「日本が金を買った(あるいは売った)」というニュースを見た時は、それが「政府の判断」なのか「日銀の動き」なのかを意識してみてください。
それだけで、日本の財政と金融のパワーバランスがクリアに見えてくるはずです。
出典・参照資料について
本記事の内容を詳しく確認したい方は、以下の公的機関の資料をご参照ください。
- 日本銀行「日本銀行の資産・負債(第140回会計年度決算報告書など)」
- 日銀が保有する資産の内訳や、金の評価方法について記載されています。
- 財務省「外国為替資金特別会計の概要」
- 2021年の金の売却経緯や、政府が保有する外貨準備の内訳が確認できます。
- ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council)「Central Bank Gold Reserves」
- 日本を含む世界各国の公的な金保有量のランキングと推移が公開されています。
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