MMPAです。
個人が保有する金融資産が過去最高を更新しました。
日銀が9月に公表した「資金循環統計」によると、2024年6月末時点での個人金融資産残高は2239兆円。
前年同期比で1.0%増加し、過去最高を更新しています。
内訳を見ると、「現金・預金」は0.1%の減少。
一方で「投資信託」が9.0%のプラス、「株式など」も4.9%増加となり、いずれも過去最高を記録しました。
背景には、新NISA制度の普及や円安・好調な企業業績を受けた株価上昇があります。
つまり、これまで安全資産に偏っていた日本人の資産が、少しずつリスク資産へシフトしつつあることが浮き彫りになったのです。
日本・米国・欧州の比較で見える「投資マインドの差」
ただし、海外と比べると日本の投資比率はまだまだ低い水準にとどまっています。
日銀が発表した国際比較データを見てみましょう。
- 日本:預金51.0%、投資信託6.0%、株式等12.2%
- アメリカ:預金11.5%、投資信託13.1%、株式等41.5%
- ユーロエリア:預金31.8%、投資信託10.9%、株式等25.3%
このように、日本は金融資産の半分以上を預貯金で保有しています。
対してアメリカはおよそ6割を株式や投資信託といった「投資」に振り分けており、家計全体の成長に直結する形でリスクを取っています。
ユーロ圏も預金は3割程度で、株式や投信を合わせて3割強を投資に回しています。
比較すると、日本の「安全志向」は一目瞭然です。
投資に踏み込む割合が少ないため、長期的に見ると資産形成のスピードで大きな差がついてしまう構造になっています。
日本でも変化の兆し
とはいえ、今回の統計に表れているように、確実に変化は始まっています。
特に新NISAの導入は大きな契機となりました。
制度の恒久化と非課税枠の拡充により、20代や30代の若年層を中心に「少額からでも投資を始めてみよう」という意識が高まっています。
(これについてはこちらの記事で触れています。
【記事チェック】株高不況の正体と資産形成のバランスについて)
また、株価の上昇により「投資をしていれば資産が増える」という実感を持つ人が増えている点も見逃せません。
さらに企業業績の改善や円安効果も追い風となり、株式・投信の評価額は上昇。
結果として、日本人の資産構成の中でも「投資部分」が少しずつ比率を増しています。
これは長期的に見れば、国民全体の資産形成にプラスに働く流れと言えるでしょう。
注意すべき落とし穴
ただし、「欧米に追いつけ」とばかりに一気に投資比率を高めるのはリスクがあります。
米国のように株式を4割以上保有する家計は、その分だけ市場の変動リスクを強く受けます。
株価下落局面では資産の目減りが大きく、生活基盤を脅かす可能性もあります。
そのため、日本の個人投資家にとっては「生活防衛資金」としての預金をしっかり確保しつつ、余裕資金を長期で投資に回すというバランスが欠かせません。
特に高齢者や退職前の世代はリスク許容度が低いため、欧米流の投資姿勢をそのまま取り入れるのは注意が必要です。
今後の資産形成に向けて
今回の統計は、「日本の投資マインドがゆっくりと変わり始めている」ことを示しています。
インフレ傾向の現在では、資産形成のためには、預貯金だけではなく、投資信託や株式を通じて「お金に働いてもらう」意識が重要です。
新NISAやiDeCoといった制度を活用し、分散投資・長期投資を徹底することが、着実な資産形成につながります。
欧米のように一気に投資割合を高める必要はありませんが、資産の数%ずつでも投資を増やしていくことが、将来的に大きな差を生むことになるかもしれません。
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