●【不動産バブルの出口戦略?】「定期借地権付きマンション」ブームの裏にある“先送り”の構造●

MMPAです。

東京23区の新築マンション販売価格が1億円を超えて久しいですね。
4-9月も過去最高の1億3千万円超えだったようです。

そんな中、「定期借地権付きマンション」に注目が集まっています。

※本記事は、読売新聞オンライン(2025年10月19日配信)
『価格上昇止まらぬ首都圏マンション、三方よしの「定期借地権付き」人気高まる』をもとに、
投資家・購入者の視点で概要と考察をまとめたものです。


■供給が急増する「定期借地権付きマンション」

首都圏のマンション価格が天井知らずの上昇を続けるなか、
「定期借地権付きマンション」(以下、定借マンション)の供給が急増しています。

読売新聞によれば、2025年1~6月の新築マンション供給戸数は前年より減少した一方で、
定借付きマンションは前年の約3.7倍、634戸に達し、年間で過去最多の1500戸に迫る勢いだといいます。

代表例は三井不動産レジデンシャルの「パークタワー渋谷笹塚」。
約70平方メートル・3LDKが1億6000万円前後と、近隣相場より約2割安。
借地料は月2000円ほどに抑えられており、第1期230戸が即日完売したとのことです。


■仕組みと狙い:「三方よし」のはずが…

定期借地権とは、土地を一定期間(50~70年など)借りて建物を建てる制度。
期間が満了すれば更地にして土地所有者へ返還するルールです。

開発側は土地購入のコストを抑え、
土地所有者は資産を手放さずに賃料収入を得る。
そして購入者は相場より安く新築マンションを買える──
記事ではこれを“三方よし”としています。

しかし、実際の購入・居住・売却の視点で見ると、話はそう単純ではありません。


■私の考察:買う前に冷静に考えるべき「出口リスク」

私は以前から中古マンション市場を見ていますが、
「やけに安いな」と思って調べると、定借残存期間が10年を切っているケースが多い。

ここで考えるべきは、「10年後、その物件は誰が買うのか?」という点です。
たとえば定借期間が残り30年の物件を15年住んだとすれば、残り15年。
この状態で次の買い手が現れるか──売出価格を下げれば買い手が見つかるかもしれません。

つまり、**新築で買った瞬間から価値が減少し始める「減価消耗型不動産」**なのです。
住宅ローンを35年組んだとしても、土地が返還される時点で建物の価値はゼロ。
返済期間よりも早く“寿命”が来てしまう矛盾があります。


■「問題の先送り」ではないか?

地価が高止まりし、供給が難しい今の東京市場で、
定借マンションを量産する流れは一見合理的に見えます。
しかし本質的には、価格高騰という根本問題の先送りではないでしょうか。

不動産投資を過熱させてきた政策や資金流入を冷ます方が本筋のはず。
「土地を借りれば安く見せられる」という発想で建て続けると、
数十年後には“返却不能マンション”や“再建築不能地”の問題が噴出する懸念があります。


■日本の法制度では、貸すより借りる側が強い

もう一つ見逃せないのは、日本の借地借家法の性質。
基本的に借主(住む側)の権利が非常に強いため、
契約満了後に本当に更地で返ってくるのかは未知数です。

さらに、定借期限が近づくと居住者は「どうせ解体される前に売ろう」と考えるのが自然。
結果として、管理組合の合意形成が崩れ、**解体も再建もできない“詰みマンション”**になる可能性があります。


■デベロッパーは「出口」まで責任を持つのか?

新築販売時には「手頃・安心・将来性あり」と宣伝される定借マンションですが、
契約満了時に建物の処分・返還・費用負担を誰が担うのかは曖昧です。
デベロッパーが70年後の解体責任を取る保証はなく(普通に考えて取らないでしょう)、
結局は居住者同士で莫大な解体費を負担する事態もありえます。

■結論:メリットよりリスクが目立つ

確かに新築時の販売価格は割安に見えます。
しかし、「安さの理由」が土地を所有できないことに起因する以上、
その差は“値引き”ではなく“制約”の代償にすぎません。

長期で見れば、所有権付き物件の方が資産価値・自由度・売却流動性で圧倒的に優位です。
特に将来的に住み替えを視野に入れる層にとって、定借は選びにくい選択肢でしょう。


■MMPAまとめ

不動産会社・土地所有者・購入者の三方よし──
たしかに今はそう見えるかもしれません。
ですが、70年後の“第四の当事者”=次世代が負担を背負う構造であることを忘れてはいけません。
50年後大きな社会問題になる可能性が大きいと思っています。

今の「お得感」は、未来から見ればただのコストの先送りかもしれません。
購入を検討する際は、“出口の見えない安さ”に惑わされず、
資産として持てる不動産かどうかを基準に判断することが大切です。

参照記事リンクはこちら

価格上昇止まらぬ首都圏マンション、三方よしの「定期借地権付き」人気高まる…供給数過去最多か


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